ストレスチェック義務が中小企業にも拡大へ ― 実務対応はどう変わる?

2025年5月27日に成立した改正労働安全衛生法により、従業員50人未満の事業場にもストレスチェックの義務が拡大されます。本記事では、改正内容の要点とともに、中小企業としてどのように準備すべきかを解説します。
すべての企業に義務化されるストレスチェック
近年、労働者のメンタルヘルスへの関心が高まる中、2025年5月27日、ストレスチェック制度の対象が広がる法改正が成立しました。これまで努力義務とされていた50人未満の事業場にも、今後は義務として求められます。熊本県内の中小企業経営者・人事担当者の皆様にとっても、準備が必要な重要な改正です。
法改正のポイント
- ストレスチェックの義務対象を「従業員50人未満」の事業場にも拡大
- ストレスチェック義務化の施行時期は公布から3年以内(具体的な時期は政令で今後定められる)
- 高年齢労働者への労働災害防止対策を努力義務として追加(施行は令和8年4月)
- 化学物質管理違反の罰則強化、個人事業者への労災防止対策の拡充
ストレスチェック制度の基本と改正の影響
ストレスチェック制度は、従業員の心理的負担の状況を把握し、必要に応じて医師の面接指導や職場環境の改善を促す制度です。これまで50人以上の事業場に限られていた義務が、すべての企業に拡大されることで、事業主の対応が求められます。
特に中小企業では、産業医の確保や運用体制の構築に課題があるため、社労士や外部サービスの活用が現実的な選択肢となるでしょう。
今からできる中小企業の準備
- 社内での制度理解と方針共有
- 実施方法(外部委託 or 自社対応)の検討
- 対象者の把握と記録体制の整備
- 実施結果のフィードバックと改善フローの整備
中小企業の場合、費用や人的リソースの制約があるため、地域の産業保健センターや社労士事務所と連携して準備を進めることが重要です。
高年齢労働者対応について
令和8年4月からは、高年齢労働者の特性を踏まえた作業環境改善や業務配慮が努力義務となります。高齢化が進む熊本県の労働市場においても、定年延長や再雇用後の職場適応支援として重要なテーマです。中小企業でも、作業負担の軽減策や休憩・作業時間の見直しを検討する必要があります。
変化に備えた制度整備を今のうちに
この法改正は、中小企業の人事労務管理に大きな影響を与えるものであり、制度への理解と計画的な準備が求められます。ストレスチェック制度の導入は、単なる義務対応にとどまらず、職場の健全化と離職防止にも寄与します。今から取り組みを始めることで、法施行時の混乱を避け、安定した労務管理につなげることができるでしょう。
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