企業に「カスハラ対策」義務化へ │改正労働施策総合推進法の公布と熊本県中小企業の対応ポイント

2025年6月11日、企業に対しカスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」)の防止措置を義務付ける法律が公布されました。今回の法改正は、これまで東京都で先行的に義務化されていたカスハラ対策を全国レベルに引き上げるもので、すべての事業者が対象となります。熊本県内の中小企業においても、他人事では済まされない重要な法改正です。本記事では、法改正のポイントと、企業として今後どのような対応が求められるのかを解説します。
改正法の背景と主なポイント
2025年6月4日に成立、6月11日に公布された「改正労働施策総合推進法等」では、以下の3つの柱が掲げられています。
1. ハラスメント対策の強化
- カスハラに対して、企業に雇用管理上必要な措置の実施を義務化
- 求職者へのセクハラ防止措置も義務化
- 国民全体の規範意識を醸成するための国の啓発活動も明記
2. 女性活躍推進の強化
- 男女賃金差や女性管理職比率の開示義務を101人以上の企業に拡大
- 「プラチナえるぼし」認定の条件に、セクハラ防止施策の情報開示が追加
- 女性活躍推進法の有効期限を10年延長(令和18年まで)
3. 治療と仕事の両立支援
- 企業に対し、治療と就業の両立支援について努力義務を明記
中小企業が今から準備すべきこと
特に注目すべきは、カスハラへの企業責任の明確化です。今後、厚労省のガイドラインが示される予定ですが、現時点で考えられる企業側の対応は以下の通りです。
- 社内の苦情処理体制(相談窓口など)の整備
- カスハラに関する就業規則や社内規程の見直し
- 従業員向けの研修やマニュアルの作成
- トラブル時の記録・報告体制の構築
また、顧客対応が中心となる業種(小売、医療、介護、宿泊、飲食等)では、前線の従業員を守るための「具体的な対応ルール」づくりがより重要になります。
おわりに
労働施策の強化が進む中、企業にとって「従業員を守る体制整備」は避けられないテーマになりつつあります。特に中小企業においては、人材定着や職場の安心感づくりという観点からも、早めの対応が必要です。
当事務所では、就業規則の見直しや社内制度整備、従業員研修など、実務に即した支援を行っております。ぜひお気軽にご相談ください。
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