36協定の「形骸化」が引き起こす落とし穴 長時間労働違反が13%に

2024年度、東京・中央労働基準監督署の監督指導で明らかになったのは、36協定で定めた「延長時間」を超える違反の多発。特に月80時間未満に抑える努力をしながらも、結果的に違反となるケースが目立っています。熊本県内の中小企業にとっても、これは他人事ではありません。
36協定の「延長時間」違反が目立つ実態
東京・中央労働基準監督署の調査によると、2024年の監督指導(約3000件)のうち、12.7%の事業場で違法な時間外労働が確認されました。割増賃金(7.1%)、労働条件明示(5.1%)よりも高い違反率です。特に目立つのが、36協定の延長時間を「超えてしまう」違反。これは単なる手続きミスではなく、労務管理の仕組み自体が機能していないリスクを示唆しています。
なぜ「超えてしまう」のか?
多くの企業が、過労死ライン(月80時間)を意識して、延長時間を45時間や60時間に抑えています。にもかかわらず、繁忙期や業務逼迫の場面で、その設定を守り切れず違反となっているのが現状です。
これには、業務計画や人員配置の精度不足、残業抑制の実効性の欠如など、組織的な問題が潜んでいる可能性があります。
熊本県内企業に必要な対策
熊本県内でも同様の傾向が起きていると仮定するなら、以下の対策が急務です:
1. 36協定の見直しと現実との整合性の確認
延長時間の設定が実態とかけ離れていないかを再確認。
2. 実労働時間の継続的モニタリング
単に協定を締結するだけでなく、毎月の実績を検証し、逸脱があれば即対応。
3. 管理職の労務マネジメント研修の実施
現場での残業抑制意識と対応力を強化する。
4. 業務改善・DXの導入検討
業務のボトルネック解消に向けたテクノロジー活用も重要です。
36協定の「実効性」を問う時代へ
「形だけの36協定」では、もはや通用しない時代です。万が一、協定を超えた労働が常態化すれば、労基署の是正指導に加え、健康被害による労災リスク、企業イメージの毀損にもつながります。
今こそ、協定内容の見直しと実態に即した労務管理の確立が求められています。
当事務所では、36協定の点検・再設計支援や、労働時間管理体制の見直しについて個別相談を受け付けております。お気軽にご相談ください。
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