【内部不正2.4億円】ガンホー事件に学ぶ「架空発注」防止策と中小企業が今すぐできること

2025年8月14日、ガンホー・オンライン・エンターテイメントで発覚した、幹部級社員による総額約2.4億円の着服事件。
今回の不正は「架空発注」を繰り返すという典型的な手口でした。規模は大企業ですが、同じ構造的なリスクは熊本県内の中小企業でも日常的に存在します。
本記事では、事件の概要を踏まえ、中小企業が直面しやすい内部不正の落とし穴と、今すぐできる予防策を整理します。
事件の概要
ガンホーの元幹部社員は、自身を受注者とする架空発注を繰り返し、業務委託費として2億4,000万円を着服。さらに別の取引先にも架空発注で約1億円を流出させました。
外部事業者への発注や支払いについて、部署外からのチェックがなく、管理職の裁量と権限が集中していたことが背景です。
会社は懲戒解雇や刑事告訴を検討するとともに、決裁権限の見直しやコンプライアンス研修の強化を発表しました。
中小企業でも起こり得る「架空発注」
「大企業の話だから関係ない」と考えるのは危険です。
中小企業の場合、以下の理由で内部不正のリスクはむしろ高まります。
- 少人数ゆえの権限集中:経理・購買・契約の決裁が同一人物に集中
- 監視機能の形骸化:社長や経理担当が「長年の付き合いだから」とノーチェック
- ITシステム未導入:発注・支払い記録が紙や口頭で管理され、不正の痕跡が残りにくい
今すぐできる防止策
中小企業が取れる現実的な対策は、コストをかけずとも始められます。
1. 業務分掌の明確化
発注と支払いを同一人物が行わないようにし、必ず別の人が確認する仕組みを作る。
2. 決裁権限の段階化
金額に応じて複数人承認を必須にする(例:50万円以上は役員2名承認)。
3. 取引先の定期的な棚卸し
実在確認や過去取引のレビューを年1回実施。
4. 外部監査や第三者チェック
税理士・社労士・弁護士など専門家に、不定期で発注・契約記録を確認してもらう。
まとめ
今回のガンホー事件は、金額こそ大きいものの、手口自体は中小企業でも再現可能なほど単純です。
内部不正は「信頼していた人」から起こります。信頼と監視は両立できます。
ぜひ今日からでも、発注・支払いプロセスの見直しを始めましょう。
荻生労務研究所からのひと言:
内部統制は「大企業だけの話」ではありません。特に熊本県内の中小企業では、経営者の目が届きやすい反面、「一人に頼りきる」構造が不正の温床になります。
当事務所では、発注・契約・支払いのチェック体制構築や社内規程整備もサポートしています。お気軽にご相談ください。
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