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人事労務ニュース

「治療と仕事の両立支援」が2026年4月から努力義務に 熊本の中小企業がいま整えておきたいこと

熊本の中小企業が“シニア活用”で後れを取らないために、いま整えておきたいこと

2026年4月から、「治療と仕事の両立支援」が事業主の“努力義務”として法律に明記されます。
がんをはじめ、病気と向き合いながら働く従業員は、これから確実に増えていきます。
とくに熊本県内の中小企業では、ベテラン社員やシニア人材の存在が事業継続のカギを握っており、
「病気=即離職」となってしまうと、現場に大きなダメージを与えかねません。

今回は、労働新聞の「今週の視点」で取り上げられていた内容を手がかりに、
社労士としての実務経験も踏まえながら、熊本の中小企業がいまから準備しておきたいポイントを整理します。

なぜ今「治療と仕事の両立支援」なのか?

労働施策総合推進法の改正により、
2026年4月から「治療と仕事の両立支援の推進」が事業主の努力義務として位置付けられます。

厚生労働省の調査では、
・何らかの病気で通院している就業者は「4割」
・正社員に絞っても約3分の1
という数字が出ています。

がんに限って見ても、
「在職中に7人に1人が一度は罹患する」といわれ、
5年生存率は6割を超え、治療は入院よりも通院が主流になってきています。

一方で、企業側の現場感覚としては、
・「治療が必要なら、いったん辞めてもらうしかない」
・「長期休職は認めるが、復帰後の働き方は白紙」
・「本人が言い出しにくい雰囲気のまま、突然退職届が出てくる」
といったケースも、まだまだ少なくありません。

高齢化と人手不足が同時に進むなかで、
「病気を抱えたベテラン社員の離職」は、
単なる1人分の欠員では、済まなくなっています。

・技術やノウハウが一気に失われる
・若手への引継ぎができない
・顧客との関係性が途切れる

こうした損失を考えれば、
「治療と仕事の両立支援」を“コスト”ではなく
“シニア活用のための投資”と捉え直す必要があります。

法律・指針で押さえるべき基本ライン

現在のガイドライン、今後予定されている指針案を踏まえると、
企業が押さえておくべきポイントは次のとおりです。

● 対象となる労働者
雇用形態を問わず、すべての労働者が対象です。
正社員だけでなく、パート・アルバイト・有期契約社員も含まれます。

● 対象となる疾病
「反復・継続した治療が必要な全ての疾病」が対象とされ、
指針案では「主治医の診断により、増悪防止等のため治療が必要とされたもの」とされる予定です。

がん、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、うつ病などのメンタルヘルスも含め、
現実的にはかなり幅広い病気が対象になり得ます。

● 求められる基本的な対応
・相談窓口の明確化
・主治医の意見書など、医療情報の適切な取得
・就業配慮(勤務時間・勤務日数・配置転換など)の検討
・休職・復職のルール整備
・上司や同僚への周知・理解促進

「特別なことをしなければならない」というより、
これまで曖昧だった対応を“見える化”し、社内で共通ルールに落とし込むイメージです。

熊本の中小企業が陥りやすい「もったいない離職」

熊本県内の中小企業を見ていると、
次のような“もったいない離職”のパターンが目立ちます。

・社長や上司が「忙しそうだから、休んでもらったほうがいい」と善意で判断
→ 本人は「迷惑をかけたくない」と早々に退職を選ぶ

・休職までは認めたものの、復帰後の働き方の整理がない
→ 復帰後のイメージが持てず、結局戻ってこない

・制度がなく、本人も言い出しにくい
→ 会社に相談する前に、家族と話し合って退職を決める

会社としては「引き留めたかった」
本人としては「できるなら働き続けたかった」

にもかかわらず、制度やコミュニケーションがないために、
双方にとって不本意な離職となってしまうケースが少なくありません。

とくに、
・現場をまとめている50〜60代のリーダー
・特定顧客との関係性を一手に担っている営業
・熟練技能を持つ技術者、職人
などは、「代替困難な人材」です。

このクラスの人材が、病気を理由に突然辞めてしまうと、
後任の育成に3〜5年かかることも、珍しくありません。

中小企業でもできる「両立支援」3つの実務ポイント

大企業のように、手厚い制度をいきなり整える必要はありません。
熊本の中小企業でも、次の3つから始めるだけで、大きく変わります。

(1)「相談して良い」ことを、まずはメッセージとして出す
・就業規則や社内掲示で「治療と仕事の両立支援に取り組みます」と明記する
・面談や評価の場で「体調面で気になることがあれば、早めに相談してほしい」と伝える

重要なのは、「病気のことを会社に言ったら不利になるのでは」という不安を和らげることです。
制度よりも先に、「会社としての意思表示」をはっきりさせることが、第一歩になります。

(2)簡易な「フロー」と「書式」を作っておく
例えば、次のような流れを、A4一枚の社内資料にしておくと有効です。

1. 本人から上司・総務への相談
2. 主治医の意見書などの提出(フォーマットを用意)
3. 会社側で就業上の配慮案を検討(短時間/短日勤務、配置換えなど)
4. 本人と面談し、合意形成
5. 定期的に見直し

これだけでも、属人的な対応から一歩抜け出せます。
「いつも場当たり」で対応していると、結局は一番弱い人にしわ寄せが行ってしまいます。

(3)復職後の“受け皿”としての短時間・短日勤務を用意する
いきなりフルタイムに戻るのではなく、
・1日4〜6時間勤務
・週3〜4日勤務
といった“助走期間”を設けることが現実的です。

就業規則に明文化しておくか、少なくとも「個別に合意すれば可能」として運用できるようにしておくと、
本人も会社も安心して復帰計画を立てられます。

「シニア活用」「人材難」とセットで考える

65歳定年や70歳までの就業機会確保が進む中、
管理職や高度専門職のポストも、自然と高齢化していきます。

・適切な後継者がまだ育っていない
・特定業務はその人しか分からない
という状況は、熊本の現場でもよく見られます。

このとき、
「健康でフルタイムで働ける人だけを前提とした人事制度」のままでは、
早晩、行き詰まります。

・ポストオフ(役職定年)のタイミングを柔軟にする
・後継者育成期間を設けつつ、ベテランにはペースを落としてもらう
・勤務地や担当範囲を絞り、負荷を調整する

こうした“第三の両立支援”(①子育てと仕事、②介護と仕事 に続く、
③治療と仕事の両立)を意識した設計が求められます。

まとめ:離職を防ぐ「仕組み化」が、熊本の中小企業の競争力になる

ポイントを整理すると――

・2026年4月から、「治療と仕事の両立支援」は事業主の努力義務
・通院しながら働く従業員は“例外”ではなく“当たり前”の存在になっていく
・とくにシニア人材・ベテラン社員の突然の離職は、事業継続に直結するリスク
・中小企業でも、「相談できる雰囲気」「簡単なフロー」「復職後の受け皿」があれば、十分に取り組める

病気を抱えながらでも、
「できる範囲で、できるだけ長く」働いてもらえることは、
会社にとっても、本人やその家族にとってもプラスになります。

社会保険労務士 荻生労務研究所では、
・就業規則への反映
・両立支援の社内フローや書式の作成
・管理職向け研修(面談のやり方、配慮の考え方)
など、貴社の規模や実情に合わせたサポートが可能です。

「うちの会社の規模でも、何かしたほうが良いのか?」
「すでに病気を抱えた社員がいて、対応に悩んでいる」

そのような場合は、一度ご相談ください。
熊本の中小企業だからこそできる、現実的な“両立支援”の形を、一緒に考えていきましょう。

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