【2026年最新】中小企業経営者が知るべき「社会保険料削減スキーム」の危険性と正しい対策

「日本維新の会」議員問題で明らかになった「国保逃れ」の実態
2026年1月、日本維新の会の地方議員が実態のない一般社団法人を通じて社会保険に加入し、国民健康保険料の負担を回避していた「国保逃れ」問題が大きな話題になりました。
実はこの手法、SNSや動画サイトで「社会保険料削減スキーム」として広く宣伝されており、熊本県内の皆さまにも勧誘が及んでいる可能性があります。
社会保険労務士として、この問題の本質と、中小企業が本当に取るべき対策についてお伝えします。
「国保逃れ」とは?その仕組みを理解する
国保と社保の保険料の違い
まず、国民健康保険(国保)と社会保険(社保)の保険料システムの違いを理解することが重要です。
国民健康保険の特徴:
– 保険料は全額自己負担
– 扶養制度がなく、家族一人ひとりに保険料が発生
– 所得が高いと保険料も高額になる
– 自営業者、フリーランス、議員などが加入
社会保険(協会けんぽ等)の特徴:
– 保険料は会社と従業員で折半
– 扶養家族の追加保険料なし
– 厚生年金保険にも同時加入で将来の年金額が増える
– 会社員、法人役員などが加入
この制度の違いを利用して、年間数十万円から場合によっては100万円以上の保険料削減ができると謳われているのが「社会保険料削減スキーム」なのです。
「国保逃れ」の具体的手法
報道によると、以下のような手順で行われています:
1. 一般社団法人を設立(または既存の法人と契約)
2. その法人の「理事」に名目上就任
3. 実態のない、または極めて形式的な業務報酬を設定
4. その法人を通じて社会保険に加入
5. 国保から社保に切り替え
SNS等では「合法的」「節税対策」などとも表現されていますが、厚生労働大臣は「経営参画を内容とする経常的な労務の提供があるか」が判断基準と明言しており、実態のない加入は問題視されています。
経営者が知るべきリスク
法的リスク:脱法行為と判断される可能性
実態のない法人での社会保険加入は、以下のリスクがあります:
1. 日本年金機構による調査・指導
社会保険の適用事業所には定期的な調査が入ります。実態のない役員報酬や業務内容が発覚すれば、加入資格が否認される可能性があります。
2. 罰則の適用
健康保険法に基づき、悪質なケースでは6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される恐れがあります。
3. 遡及徴収
過去2年分まで遡って未納分を一括請求される可能性があり、延滞金も発生します。
信用リスク:企業イメージの毀損
今回の維新議員の問題のように、SNSでの告発や報道により、脱法的スキームの利用が明るみに出るケースが増えています。
経営者にとって、地域での信用は何よりも大切な資産です。「保険料を不当に削減している」という評判が広がれば、以下のような深刻な影響があります:
– 取引先からの信用失墜
– 優秀な人材の採用困難
– 金融機関からの融資審査への悪影響
– 地域社会での評判悪化
2027年社会保険適用拡大と中小企業への影響
段階的に進む適用範囲の拡大
2027年10月から、社会保険の適用対象が大幅に拡大されます:
現在の加入条件(従業員51人以上の企業):
– 週の所定労働時間が20時間以上
– 月額賃金が88,000円以上
– 2ヶ月を超える雇用見込み
– 学生でないこと
2026年10月以降の変更:
– 企業規模要件が段階的に撤廃(2027年10月以降、段階的に実施)
– 賃金要件も撤廃(2026年10月実施)
– 最終的には週20時間以上働く全ての従業員が対象に
これにより、熊本県内の多くの中小企業で社会保険料の負担が増加することが予想されます。
だからこそ正しい対策が必要
保険料負担の増加は確かに経営上の課題です。しかし、だからこそ「脱法的手段」ではなく「合法的で持続可能な方法」で対応することが重要なのです。
社労士が提案する正しい社会保険料対策
1. 労働時間管理の最適化
週20時間未満のパート・アルバイトの効率的な活用や、シフト管理の見直しにより、適法な範囲で加入対象者を調整することは可能です。
2. 給与体系の見直し
基本給と諸手当のバランスを見直すことで、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額を適切に設定できます。
3. 助成金・補助金の活用
社会保険加入に伴う負担を軽減するための各種助成金があります:
– キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
– 業務改善助成金(生産性の向上に取り組む企業の投資を支援)
– 短時間労働者の就業調整を減らす取り組みへの支援(労働者の社会保険料を追加負担した事業主への支援)
4. 就業規則・雇用契約の適正化
正しい就業規則と雇用契約により、労務トラブルを未然に防ぎ、結果的にコスト削減につながります。
5. 生産性向上による総人件費の適正化
DX推進や業務効率化により、少人数でも高い生産性を実現できれば、社会保険料負担の増加を吸収できます。
熊本県内中小企業の実例:正攻法で成功したケース
実際に私がサポートした熊本市内の製造業A社(従業員30名)では、以下の取り組みで社会保険適用拡大に対応しました:
1. パート従業員の労働時間を見直し、本人の希望も踏まえて週19時間以内に調整
2. 一部の従業員は正社員化し、厚生年金保険加入でモチベーション向上
3. キャリアアップ助成金を活用し、正社員化に伴う費用を軽減
4. 業務のデジタル化で生産性が15%向上
結果として、社会保険料の増加を最小限に抑えつつ、従業員満足度も向上し、離職率が大幅に低下しました。
まとめ:専門家への相談が企業を守る
SNSで「簡単に社会保険料が削減できる」と勧誘されても、安易に飛びつかないでください。
今回の維新議員の問題が示すように、一見「合法的」に見えるスキームでも、実態が伴わなければ「脱法行為」として社会的に糾弾され、法的リスクも負うことになります。
社会保険料の負担増加は確かに経営課題ですが、だからこそ正しい知識を持った専門家のサポートが必要です。
社会保険労務士ができること:
– 最新の法改正情報の提供
– 企業の実態に合わせた合法的な社会保険料対策
– 助成金・補助金の申請サポート
– 労務管理全般のコンサルティング
– 就業規則・雇用契約書の整備
熊本県内の中小企業の皆さまが、健全で持続可能な経営を続けられるよう、私たち社会保険労務士は全力でサポートいたします。
目先の負担軽減ではなく、長期的な企業価値向上を一緒に考えていきましょう。
お問い合わせ
社会保険に関するご相談、労務管理でお困りのことがありましたら、お気軽にご連絡ください。初回相談は無料で承っております。
参考ニュース:
朝日新聞「【解説人語】『国保逃れ』の維新議員 『脱法的行為』の手法と背景は」
https://www.asahi.com/articles/ASV182TVGV18DIFI005M.html
※本記事の内容は2026年1月9日時点の情報に基づいています。最新の法令・制度については、必ず専門家にご確認ください。
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