労務顧問を外部に依頼するのと社内人事担当を雇うのはどちらが良いですか?
労務顧問を外部に依頼するのと社内人事担当を雇うのはどちらが良い?コスト・専門性・柔軟性を徹底比較
企業が成長し、従業員数が増えてくると避けて通れないのが「労務管理」の体制づくりです。ここで多くの企業が悩むのが、「社内に人事担当者を置くべきか?それとも社労士など外部の労務顧問に依頼するべきか?」という選択です。
今回は、その2つの選択肢について、コスト・専門性・実務面から比較し、どちらが自社にとって最適かを見極めるポイントを解説します。
結論から:企業規模とニーズに応じて選択を
結論から言うと、社員数が少なく労務の課題が限定的な企業には外部の労務顧問の活用が効果的です。一方で、社員数が多くなり日々の労務対応や採用業務、社員教育などを社内で完結させたい場合は、社内に人事担当者を置くメリットが大きくなります。
法的な複雑さや変化に対応する必要がある以上、どちらを選んでも一定の専門性は欠かせません。
労務顧問と社内人事の違いと選ぶポイント
■外部の労務顧問(社労士など)の特徴
・専門性が高く、法律や制度変更への対応に強い
・必要な業務だけを依頼できるため、コストを抑えやすい
・社会保険手続き、就業規則作成、労基署対応など幅広く対応可能
・一方で、常駐ではないため、社内事情の把握に時間がかかることもある
■社内人事担当の特徴
・日常的な人事・労務のやり取りがスムーズにできる
・企業文化を理解した上での対応が可能
・採用・教育・評価など中長期的な人事戦略に強い
・ただし、労働法全般への対応力は個人のスキルに依存しやすい
・人件費や教育コストが継続的に発生する
■選ぶ際の判断基準
・社員数が10〜20名未満なら、まずは外部顧問の活用がおすすめ
・社員数が増え、社内調整や制度運用が複雑になってきたら社内人事の検討を
・外部顧問+社内人事の併用という選択肢も視野に入れる
よくある誤解:「社内に人がいれば十分」という思い込み
中小企業の現場では、「人事担当者がいるから社労士はいらない」と考えるケースもありますが、これは大きな誤解です。
労働基準法や社会保険制度は頻繁に改正されており、専門家の継続的な支援がないと法令違反や未然のトラブルにつながりやすくなります。たとえば残業代の計算ミスや、就業規則が法改正に未対応のまま運用されていると、後々大きなリスクを抱えることになります。
実務での注意点:労務トラブル対応や手続き業務の負担
・退職時のトラブル(未払賃金、パワハラなど)への対応
・助成金申請や雇用調整助成金の適用要件チェック
・社会保険・労働保険の各種届出とスケジュール管理
これらは専門知識と正確性が求められる業務です。社内人事だけで対応しきれない場合、社労士の力を借りることでミスや漏れを防げます。
社労士など専門家による支援のメリット
社労士をはじめとした外部の労務顧問は、以下のような形で企業を支援できます:
・法改正への迅速な対応とアドバイス
・労使トラブルへの対応策の提案と交渉支援
・手続業務の代行で社内の負担軽減
・労務監査や内部チェックの実施
・就業規則・人事制度の設計サポート
これらは単なる「手続代行」ではなく、企業経営のリスクマネジメントにも直結する重要な業務です。
まとめ:現状と将来像に合った選択を
企業の規模や課題によって、労務顧問と社内人事のどちらが適しているかは異なります。まずは外部顧問でスタートし、必要に応じて社内体制を整えていく段階的なアプローチが効果的です。
もし労務体制の構築や見直しで迷われている場合は、社労士などの専門家に一度相談してみることをおすすめします。現状分析から最適な提案を受けることで、自社にとって本当に必要な体制が見えてくるはずです。
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