介護離職年10万人の現実 中小企業こそ求められる「両立支援」体制の整備とは?
超高齢化の進展に伴い、働き盛り世代が親の介護に直面する事例が急増しています。厚生労働省が新たに策定したガイドラインをもとに、熊本県内中小企業がどのように「介護離職」を防ぎ、職場環境を整えるべきかを、社労士の視点から解説します。
「介護離職」年10万人の衝撃
総務省が5年に1度行う調査によると、2022年に介護をしながら働く人は364万6,000人。また2022年9月までの1年間に、介護を理由に離職した人は10万6,000人。その半数が40~50代の中核人材であることは、中小企業にとって無視できないリスクです。特に地方では、親元の近くで働く従業員が介護の主な担い手となりやすく、突然の離職や業務の停滞につながりかねません。
両立支援は“制度”だけでなく“文化”がカギ
育児・介護休業法では、介護休業(通算93日)や介護休暇(年5日)を設けていますが、取得率はそれぞれ1.6%、4.5%にとどまっています。その背景には、制度の「知らなさ」と「使いづらさ」があります。
特に中小企業では、「代替要員がいない」「前例がない」といった理由から支援体制が後手に回りやすい現状があります。
厚生労働省ガイドライン:経営者が取るべき3つのステップ
今回厚労省が示した新指針では、次の3つのステップが強調されています。
- 早期把握:「介護が始まったかも?」という段階で、面談やアンケート等で状況を確認
- 制度周知と相談対応:介護保険サービスの紹介や両立支援制度の丁寧な説明
- 職場での調整:業務分担や在宅勤務の活用、代替要員確保の工夫
特に面談で使えるチェックシートや、社員向けの研修テキストも提供されており、すぐに実践に移しやすい内容となっています。
これらの資料は、厚生労働省の「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的支援ツール」に掲載されていますので、ぜひご活用ください。
熊本の中小企業にとっての「次の一手」
当事務所では、介護と仕事の両立に向けた社内体制の整備や助成金活用に関するご相談を受け付けています。代替要員確保や手当支給への支援制度も活用可能です。
人手不足が深刻化する今、「誰かが辞めた後」ではなく「辞めずに済む仕組み」を先に作ることが、経営の持続性に直結します。
まとめ
「介護離職を防ぐ」という視点は、福利厚生ではなく、「人材戦略」です。制度と文化の両輪を整えることが、これからの中小企業に求められます。
熊本で頑張る企業が、介護と仕事の両立に真正面から向き合えるよう、実務面から全力でサポートいたします。
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