初任給が急上昇する熊本で、中小企業はどう人材を守るか

熊本県内で初任給を引き上げる企業が急増中。中小企業にとって人材確保がますます難しくなる中、給与以外で人材を守るための具体的な対策や社労士からのアドバイスを紹介します。
初任給引き上げが熊本でも加速中
熊本県内でも「初任給の引き上げ」が加速しています。
熊本日日新聞と地方経済総合研究所によるアンケート調査によると、2025年春の新卒採用で初任給を前年より上げた企業は63.8%。大卒の平均初任給は21万2,199円と、前年比で約4,000円増加しています。
物価上昇が続くなか、人材確保を目的とした賃金見直しが多くの企業で進んでいます。
参照記事:「熊本県内主要企業、今春「初任給上げ」63% 企業規模で格差 TSMC進出、人材確保激化の側面も」
熊本日日新聞 2025年4月23日 18:39
中小企業に広がる「人材流出」の危機感
特に注目したいのは、企業規模による格差です。
従業員100人以上の企業では約7割が初任給を上げた一方、100人未満の企業では5割以下にとどまっています。
地場の中小企業からは「給与面で大手に太刀打ちできない」という声も聞かれました。
TSMC進出が熊本の人材市場に与えた影響
こうした動きに拍車をかけているのが、TSMCをはじめとした半導体関連企業の進出です。
高水準の給与を提示するこれらの企業が、優秀な人材を吸い上げることで、他業種や他企業にも人材確保の圧力が波及しているのです。
業種別で見える、賃上げのばらつき
業種別で見ると、金融・製造・小売業では引き上げ傾向が顕著ですが、建設業やサービス業では「変化なし」が過半数。
給与の見直しが難しい業種ほど、採用競争がさらに厳しくなっています。
中小企業が取れる「非賃金型アプローチ」
では、給与を上げる余力のない中小企業はどう対抗すればよいのでしょうか?
鍵となるのが「非賃金型のアプローチ」です。
たとえば、
・在宅勤務やフレックス制度などの柔軟な働き方
・充実した研修・スキルアップ制度
・家庭やプライベートと両立しやすい環境整備
といった施策が、若年層から支持されやすい傾向にあります。
「働きがい」で人材を定着させる
また、「働きがい」や「成長実感」を提供することも、人材の定着には欠かせません。
単に給与で勝負するのではなく、「自分を大切にしてくれる会社だ」と思ってもらえる工夫が必要です。
採用戦略には「情報発信」も欠かせない
そしてもう一つ大切なのが「情報発信」です。
求職者は給与額だけでなく、会社の雰囲気や制度、社員の声などを重視しています。
SNSや採用ページで「企業の魅力」を丁寧に伝えることが、人材確保の第一歩になります。
賃金見直しは労務リスクにも注意
ただし、急な賃上げや制度変更は労務リスクも伴います。
賃金規程や就業規則の見直しは、必ず労使の合意を得たうえで進める必要があります。
制度の整備が追いついていないと、後々トラブルになることもあります。
社労士からの提言:戦略的な人事のすすめ
中小企業こそ、今こそ「戦略的な人事」を考えるタイミングです。
現場感や情で動くのではなく、社内のデータや市場動向を見据えて、柔軟に手を打つ必要があります。
まとめ:人材確保に「できること」はまだある
「給与が出せないから仕方ない」とあきらめる前に、できることはたくさんあります。
人事労務のプロとして、貴社の状況に合ったアプローチをご提案いたします。
お気軽にご相談ください。
ご相談は、こちらのお問い合わせフォームからお寄せください。確認後ご連絡いたします。
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