熊本の最低賃金、初の1,000円超えへ 過去最大82円引き上げと中小企業経営への影響

2025年9月4日、熊本地方最低賃金審議会は県内の最低賃金を82円引き上げ、1,034円にする答申を出しました。引き上げ幅は過去最大で、全国でも最高額。来年1月1日に発効予定です。
中小企業経営者にとっては「賃上げ圧力」と「人材確保」の両面を考える必要があります。本記事では、その影響と対応策を整理します。
1. 今回の改定の背景
- 引き上げ額:+82円 → 1,034円
- 中央審議会目安(+64円)を18円上回る大幅増
- 根拠:熊本市の消費者物価指数(特に食料)が前年同月比8.1%増
- 発効日:2026年(令和8年)1月1日(例年より遅め、豪雨被害も考慮)
労働者側は「生活費上昇への対応」を主張、使用者側は「中小零細企業の負担能力」を訴え、合意に至らず公益委員の判断で決定されました。
2. 中小企業にとっての影響
1. 人件費の急増
例:10人のフルタイム従業員がいる場合、年間で約170万円超の追加コストとなる計算。
(1名あたり月間で約14,000円)
2. 価格転嫁の難しさ
特にBtoB取引では、価格転嫁に時間差や取引先の理解不足が課題。
3. 人材確保の好機でもある
最低賃金の上昇は、人材流出を防ぐ効果も。熊本は福岡への人材流出が課題でしたが、賃金差が縮まる可能性があります。
3. 経営者が今からできる準備
- 人件費シミュレーションを行い、追加コストを把握する
- 業務効率化・DX投資で生産性を上げる
- 価格交渉の戦略を早めに立て、取引先との話し合いを進める
- 補助金・助成金の活用(特に業務改善助成金)を検討する
まとめ
最低賃金の「1,000円突破」は、熊本の労働市場にとって歴史的な転換点です。
経営者にとっては負担増である一方、「人材流出防止」「地域の魅力向上」にもつながる可能性があります。
来年1月の施行まで残り4カ月弱。
経営への影響を冷静に分析し、今できる準備を一つずつ進めることが重要です。
荻生労務研究所では、中小企業の皆様の人件費試算・助成金活用・賃上げ対応戦略について個別相談を承っています。お気軽にご相談ください。
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