熊本県で急増する外国人労災「経験1年未満が4割超」から見える未然防止の急務

熊本労働局が発表した外国人労働者の労災データに、私たち中小企業が直視すべき重要なメッセージが含まれています。経験1年未満での被災者が4割を超えるという事実。その背景には何があり、どう対応すべきか。熊本の現場で労務管理を支援してきた社労士の視点から、実務的な対策をお伝えします。
経験1年未満が4割超──外国人労働者の労災が増加傾向
熊本労働局が取りまとめた令和元年から6年までのデータによれば、休業4日以上の死傷者227人のうち、43.6%が経験1年未満でした。特に製造業では機械の取扱いに不慣れなまま作業に従事するケースも多く、安全教育の未整備が深刻な問題となっています。
また、労災件数も増加傾向にあり、令和元年の11件から5年には63件まで拡大。6年は49件とわずかに減少しましたが、依然として高水準を維持しています。
熊本でも始まっている「実態調査」と「ヒアリング」
私の実務経験のなかでも、最近、労働基準監督署による外国人雇用実態の調査が複数の熊本企業で行われている事例を確認しています。単なる書類確認にとどまらず、実際の労務管理状況についてヒアリングされるケースも増えています。
これらの動きは、単に指導や是正だけでなく、「労災や労務トラブルを未然に防ぐ」という予防的アプローチの強化ともいえます。
技能実習制度・特定技能の信頼確保のために
とくに技能実習制度では、労災や労務トラブルが発生すると受け入れ停止など重大な影響が生じます。企業の信用問題に直結するだけでなく、外国人本人や地域社会にも大きな波紋を広げかねません。
今後は、「問題が起きてからの対応」ではなく、「起こる前に芽を摘む」ための体制整備が不可欠です。具体的には、以下のような対策が重要です:
- 雇入れ時の外国語による安全衛生教育の徹底
- 翻訳された厚労省教材の活用と理解度の確認
- 現場でのOJTだけでなく、図解や動画を使った視覚的な指導
- 外国人従業員への定期的なヒアリングとフォローアップ体制
経営者・人事担当者が今から取り組むべきこと
外国人労働者の安全と安心を守ることは、企業の社会的責任であると同時に、持続可能な経営の前提です。今後ますます「安全管理」「労務管理」の両輪が求められます。
「うちは問題ないから大丈夫」ではなく、「問題が起きないように先手を打つ」という意識改革が必要です。
当事務所では、外国人労働者の雇用管理に関する個別相談、安全教育体制の構築支援も行っています。熊本県内で技能実習生や特定技能の受け入れを検討・実施している事業者の皆さま、お気軽にご相談ください。
まとめ
- 熊本県で外国人労働者の労災が増加中、特に経験1年未満が43.6%
- 技能実習制度への信頼確保には、未然防止が最重要
- 雇入れ時の教育体制整備と定期的なフォローがカギ
- 熊本でも労働基準監督署による実態調査が進行中
- 問題発生の前に、企業が主体的に対応を
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