公務員の7割が経験「カスハラ」の実態調査│熊本の中小企業も他人事ではない理由

長野県が公務員や民間企業に対して実施した、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)に関する初の実態調査で、公務員の約7割が被害経験を持つという結果が明らかになりました。精神的な攻撃や過度なクレーム、威圧的な言動が横行しており、自治体だけでなく、企業にとっても深刻な課題です。熊本県内の中小企業経営者にとっても無関係ではないこの問題を、社会保険労務士の視点から解説します。
カスハラとは何か?
カスハラとは、顧客や利用者による不当な要求や嫌がらせ行為のこと。2025年6月4日には、企業にカスハラ防止対策を義務付ける「改正労働施策総合推進法」が成立し、今後すべての事業者に対策が求められることになります。今回の長野県の調査では、公務員をはじめとする公共サービス従事者がその矢面に立たされている実態が明らかになりました。
なぜ「公務」が最多なのか?
調査では、カスハラ経験者の割合が最も高かったのは「公務」(69.2%)で、「学術研究・専門サービス業」(50.0%)、「医療・福祉」(39.6%)と続いています。背景には、「お金を払っているのだから何を言ってもよい」「公務員は反論できない」といった誤った認識や、社会全体のストレス増加、「公的サービスは当然に受けられるもの」との意識、そして対応する職員への配慮に欠けた言動が常態化している実態があると考えられます。
熊本の中小企業も他人事ではない
この傾向は長野県に限らず、熊本県内の中小企業、とりわけ顧客対応が日常的な業種(小売・医療・介護・サービス業など)にも波及しています。実際、私の事務所にも「お客様からの過度なクレーム対応で職員が心を病んでしまった」「録音を義務付けるなどの対応を検討している」といった相談が増えています。
経営者が取るべき対策
中小企業がカスハラから従業員を守るためには、以下の3点が重要です:
- 明確な社内ルールの整備:カスハラの定義と対応方針を就業規則やマニュアルに明文化しましょう。
- 職場内教育の徹底:カスハラへの適切な対応方法を職員に周知し、定期的に研修を行うことが望まれます。
- 記録と共有体制の構築:トラブルの発生時には記録を残し、必要に応じて社内で共有・対応できる体制を作ることが重要です。
カスハラの経営リスクに捉えた対応を
カスハラは、従業員の心身を蝕むだけでなく、企業の存続にも関わるリスク要因です。逆に言えば、適切な対応をとることで、「働きやすい職場」としての信頼も高まります。経営者の皆様には、顧客満足と従業員保護のバランスを重視し、実効性ある対策に取り組んでいただきたいと思います。
まとめ
今回の長野県の実態調査は、地域や業種を問わず広がるカスハラ問題を改めて可視化したものです。熊本県内の中小企業においても、早めの対策こそが従業員の安心と企業の成長を支える鍵となります。
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