メンタル不調による年間7.6兆円の経済損失――熊本の中小企業も無関係ではない「見えないコスト」とは?

うつ病や統合失調症などの診断がなくても、心身の不調を抱えながら働いている従業員は少なくありません。横浜市立大学などの研究チームが発表した調査では、日本全体で年間7.6兆円の経済損失があると推計されています。この「見えない損失」、熊本の中小企業にとっても対岸の火事ではありません。
プレゼンティーズムが企業に与える深刻な影響
今回の研究で注目すべきは、「出勤しているが心身の不調で本来の力を発揮できていない」状態、いわゆるプレゼンティーズムによる損失額が、7.3兆円にものぼるという点です。欠勤(アブセンティーズム)による損失の約25倍に達し、医療費の7倍以上という数字は、あらためてメンタル不調の“コスト”の大きさを示しています。
熊本の中小企業が直面する「見えにくい課題」
熊本県内の中小企業においても、従業員数の少なさゆえに一人ひとりの生産性への依存度は高く、プレゼンティーズムは直接的な業績悪化につながりかねません。とくに「気分の落ち込み」「不眠」といった軽微な不調は見逃されやすく、表面化しにくいものです。
また、20~30代の女性に特に高い割合でメンタル不調が見られたという点は、これからの人材確保・育成を考えるうえで重要な示唆です。
企業ができる対策とは?
企業に求められるのは、「不調が起きにくい職場づくり」と「早期発見・対応の仕組み」の両輪です。具体的には、
- ストレスチェックの形骸化を防ぎ、フィードバック面談などに活かす
- 職場内コミュニケーションの質の向上
- フレックスタイムやリモート勤務など柔軟な働き方の導入
- 「セルフケア」「ラインケア」「事業場内産業保健体制」の整備
といった多層的な対策が求められます。
労務リスクの「見える化」から始めましょう
経営者にとって「見えない損失」は、最も見過ごしやすいリスクの一つです。まずは自社にどのようなメンタルヘルス課題が潜んでいるのかを見える化し、課題の本質を把握することが第一歩です。
当事務所では、熊本の実情に即したストレスチェック活用支援や、ラインケア研修、制度設計のご相談も承っております。お気軽にご相談ください。
まとめ
メンタル不調による損失は、もはや一部の企業だけの課題ではありません。人材確保がますます難しくなる中、「働きやすさ」は競争力の源泉にもなります。中小企業だからこそ、柔軟に、そして着実に対応していく姿勢が問われています。
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