「助成金ありき」では失敗する|AI・DX導入前に見直すべき本質とは?

AI・DXの導入に関心の高い熊本県内の中小企業経営者の皆様へ。最近、当事務所が出展した「熊本AI・DX革新展2025」でも最も多く寄せられたご相談が「AIやDXに使える助成金」についてでした。しかし、助成金は「申請すればもらえるもの」ではありません。今回は、社会保険労務士の視点から、助成金を活用する上での落とし穴と、本当に経営にプラスとなる活用の考え方をお伝えします。
なぜ「助成金ありき」の発想は危険なのか?
展示会などでよく「AIやDXに使える助成金はありますか?」というご質問をいただきます。実際、そうした助成金は存在しますし、有効に使えば企業の成長に貢献します。
しかし、申請にあたって最も大きな障壁となるのが、「労働基準法や社会保険関連法令の遵守体制が整っていること」という基本条件です。
法令違反のままでは、申請すらできない
助成金を申請できるのは、労働環境を適切に整備している企業だけです。
ところが、スポット相談で寄せられる企業の多くは、以下のような基本的な不備を抱えています:
- 雇用契約書が未整備
- 求人票と実際の労働条件が異なる
- 就業規則が存在しない、または10年以上未更新
- 労働時間の集計が不正確
- 未払い残業代のリスク
新規の顧問契約時に必ず実施している法令遵守の監査でも、「問題がない」といえる企業はほとんどありません。
当事務所の方針と対応
当事務所では、顧問契約がある企業を優先としつつ、一定の条件を満たす企業に対してはスポットでの助成金支援も対応しています。
ただし、特にAI・DX関連の助成金は審査が厳しく、社内の労務体制を整えるのに数年かかるケースも珍しくありません。
助成金は「結果」であって「目的」ではない
助成金を有効活用したいのであれば、「良い助成金があるか?」と探す前に、「助成金を受け取れる体制が整っているか?」を自問することが大切です。
助成金は、整った労務環境の上に成り立つ「結果」です。
まずは自社の労働環境を見直し、いつでも助成金を活用できる「準備ができた会社」に変えていくこと。それが本当に企業を強くする第一歩です。
ご相談はお気軽にどうぞ
当事務所では、法令遵守体制の診断から助成金申請支援まで、段階的にサポートを行っています。まずはお問い合わせフォームよりご連絡ください。
熊本県の中小企業がAI・DXの波に乗るために、労務の足元から整えていきましょう。
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