猛暑下の職場環境改善に必要な視点とは? 熊本市給食調理場エアコン設置報道から考える法的義務と企業の対応

熊本市が市立小中学校の給食調理場すべてにエアコンを設置する方針を発表しました。背景には、室温40度超の過酷な環境で調理員が熱中症になる事例が相次いだことがあります。これは他人事ではありません。企業にも法的に熱中症対策が求められている現在、このニュースから私たちが学ぶべきことを社会保険労務士の視点で解説します。
熊本市の給食調理場が「サウナ状態」に
2025年7月、熊本市は市立小中学校の給食調理場全98施設のうち、未設置だった94施設にエアコンを設置する方針を発表しました。室温が40度を超える環境で働く調理員が熱中症になるケースが続発し、その改善が急務となったのです。
これは公共施設に限らず、民間企業においても同様に深刻な課題です。とくに製造業や建設業、物流業など高温環境での業務が避けられない職場では、従業員の安全配慮義務が問われる場面が増えています。
熱中症対策は企業の法的義務
労働安全衛生法に基づき、事業者には従業員の健康障害を防止するための措置が義務付けられています。厚労省も毎年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開し、
- 暑さ指数(WBGT)の測定
- 空調設備や遮熱対策
- 休憩の確保
- 水分・塩分補給
などを推奨しています。
加えて、2025年6月1日から労働安全衛生規則の改正により、企業の熱中症対策が義務化され、対策の不備が安全衛生監督署の是正指導や労災認定につながるケースも増えています。
経営者が注視すべき3つの観点
1. 職場の暑熱リスクの見える化
WBGT計による定量的な測定が必要です。
2. 具体的な対策の導入
エアコン設置が難しい現場でも、スポットクーラー、冷却ベスト、遮熱シート等で環境改善は可能です。
3. 安全衛生教育と記録
日々の気温管理、従業員の体調申告、休憩・水分補給のルール化など、継続的な運用が重要です。
中小企業だからこそ、早めの対応が信頼に
熱中症による労災認定や訴訟リスクが高まる中、今後は安全配慮義務を果たしているかが採用力や企業イメージにも直結します。熊本市の対応は一つの行政判断ですが、民間でも経営者の意思決定と投資判断が職場の安全を左右します。
今一度、自社の暑熱対策を総点検してみてはいかがでしょうか?
荻生労務研究所では、暑熱対策の労務対応チェックリストや、安全衛生管理体制の整備支援も行っております。気になる方はお気軽にご相談ください。
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