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法改正情報

【2026年4月】健康保険の扶養認定が「労働契約ベース」に。熊本の中小企業が今から整える3つの実務

パート・アルバイト採用のたびに出てくる「扶養(年収130万円)」問題。
2025年12月25日付で日本年金機構から、被扶養者認定における“年間収入の見方”を、より予見可能にする新しい取扱いが示されました。適用は2026年4月1日(令和8年4月1日)からです。

結論から言うと、一定の条件を満たす場合には「労働条件通知書(雇用契約書)に書かれた賃金から見込める年収」で、原則として扶養認定を判断する扱いになります。現場の“就業調整”の悩みを減らす狙いがあります。

1. 何が変わる?(ポイントは“予見可能性”)

従来、扶養認定の年収判定は、過去実績・直近の収入・今後1年の見込みなど、実際の収入証明ベースで確認する運用が中心でした。

2026年4月1日以降は、
・労働条件通知書等に記載された賃金から見込める年収が基準未満
・他の収入(年金・事業収入など)が見込まれない
といった要件を満たすと、原則として被扶養者として取り扱う、という整理がなされます。

2. 適用される要件(ここが実務の分かれ目)

(1)年収基準:原則130万円未満

ただし例外があります。
・60歳以上/一定程度の障害がある方:180万円未満
・(配偶者を除く)19歳以上23歳未満:150万円未満
※注意:障害年金など“給与以外の収入”がある場合、この方法は使えません。

(2)生計維持関係(同一世帯かどうかで分岐)

・同一世帯:被保険者(扶養する側)の年収の1/2未満が目安
・別世帯:被保険者からの援助額(仕送り等)より少ないことが目安

※なお、1/2未満を満たさなくても、世帯の実態から被保険者が生計維持の中心と認められる場合は扶養となる余地があります。

3. 労働条件通知書で“年収見込み”を示すときの注意点

(1)「賃金」には手当・賞与も含まれます

労基法上の賃金(諸手当・賞与を含む)が対象です。
例)時給1,100円×週20時間×52週=1,144,000円(年収見込み)
ここに通勤手当や皆勤手当、賞与(年2回で合計20万円など)が“契約上見込まれる”なら、合算して判定します。
→ 1,144,000円+200,000円=1,344,000円 となり、130万円未満に収まりません。

(2)契約に明確な規定がない残業代等は、原則「見込み年収」に入れない

就業調整対策として、労働契約段階で見込みにくい時間外手当等は、扶養認定の年間収入に含めない整理になっています。
また、契約段階で想定していなかったのに、認定時点で恒常的に残業が出ている場合でも、その年度は“一時的な収入変動”として今回の取扱いで判定する(年間収入の見込額には含まない)、というQ&Aも示されています。

(3)必要になるのは「契約書類+給与収入のみの申立て」

労働条件通知書等の添付に加えて、認定対象者本人に「給与収入のみである」旨の申立てを求める運用が想定されています(健康保険被扶養者(異動)届の欄への記載、または本人作成の申立書など)。
※具体的な添付書類の詳細は「追ってお知らせします」とされています。

4. 会社側がやるべき「3つの整備」(熊本の中小企業向け)

(1)労働条件通知書(雇用契約書)を整える
・所定労働時間/日数、時給(または月給)、手当、賞与の有無と算定根拠
・更新の有無、更新時の条件見直し
「書いていないと運用できない」「書き方が曖昧だと説明が難しい」ため、採用実務の品質がそのまま扶養手続きの品質になります。

(2)“労働条件変更”が起きたら、扶養の確認も連動させる
契約更新や労働条件の変更があった場合は、その都度、当該内容に基づいて被扶養者要件の確認を行う整理です。
実務では、シフト増・時給改定・手当新設などが典型的なトリガーになります。

(3)「年1回の確認」を前提に、社内の点検フローを作る
初年度に毎回の確認が必須という整理ではありませんが、翌年度以降は少なくとも年1回、保険者が要件確認を行うことが示されています。
会社としても、年末調整・雇用契約更新・評価面談などのタイミングに“扶養確認の声掛け”を組み込むと、トラブルを減らせます。

5. よくある誤解(ここだけ押さえる)

・「130万円の基準が変わった」わけではありません
→ 変わるのは“判定のやり方(労働契約ベースを使える場面がある)”です。

・給与以外の収入(年金、事業収入等)があると、今回の簡便法は使えません
→ 従来どおり収入証明や課税証明で確認する運用になります。

・適用開始は2026年4月1日(認定日基準)
→ それ以前の認定(遡及含む)は従来の取扱いです。

まとめ:採用と扶養手続きは「同じ設計図」で動かす

今回の変更は、就業調整を減らし、扶養認定の見通しを立てやすくする方向です。一方で、会社側には「契約書類の精度」「条件変更時の連動」「本人申立ての扱い」といった事務の整備が求められます。

熊本県内の中小企業では、少人数で採用・労務・給与を回しているケースが多く、ひとつの抜けが“従業員の不安”に直結します。
2026年4月を迎える前に、雇用契約書(労働条件通知書)のテンプレートと、扶養確認の社内フローを一度見直しておくことをおすすめします。

なお、本記事は制度の概要整理です。個別案件は、家族構成・収入形態・保険者の運用により結論が変わり得ます。具体的な手続きは社労士へご相談ください。

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