経営者の「本気度」が問われる時代に D&I推進の実践的ステップとは?

関西経済連合会が発表したD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進のガイドラインは、単なる制度整備に留まらず、「経営者自身がどう関わるか」という姿勢を問うものです。熊本県内の中小企業にとっても、これからの採用・定着・成長戦略を考える上で無視できないテーマです。
D&Iは「他人事」ではない
ダイバーシティ推進というと、企業規模の大きい都市部の話と捉えられがちですが、実は地方こそ人材多様性を活かす必要があります。少子高齢化、採用難、地域経済の縮小——このような構造的課題に立ち向かうには、「どんな人でも力を発揮できる職場づくり」が不可欠です。
トップコミットメントの「伝わり方」がカギ
関経連のガイドラインでは、D&Iを社内に根付かせるプロセスとして次の4段階が示されています:
- トップコミットメントの表明
- 全社方針の策定
- 各部門への計画展開
- 進捗評価とフォローアップ
特に重要なのが1。つまり「経営者が何をどこまで本気で考えているか」が社員に伝わらないと、他のステップが進まないのです。
熊本企業にとっての実践ヒント
今回の報告書では、管理職研修の冒頭に「経営者と専門家の対談動画」を視聴させた事例が紹介されています。これは単なる形式的な関与ではなく、経営者の意志と考えを“見える化”する工夫です。中小企業でも、朝礼や会議、社内報、SNSなどあらゆる機会を活用して、経営者自身の言葉でD&Iの重要性を伝える工夫が必要です。
制度設計だけでは足りない
現場部門ごとにD&I担当者を設け、定期的な対話を重ねることで「実感ある施策」にしていくことが求められます。また、進捗の見える化とフィードバックの体制が、D&Iを「継続的な経営戦略」として位置づける鍵になります。
まとめ
D&I推進は、単なる女性活躍や多様性の尊重にとどまりません。それは、企業の「持続可能性」を担保する経営の本質的課題です。経営者の皆様には、「制度をつくる」だけでなく、「何のためにやるのか」を繰り返し社内に伝え、実行に移していく「本気の姿勢」が求められています。
「D&I=誰もが働きやすい組織づくり」は、必ず御社の強みに変わります。
参考資料
関西経済連合会の「D&Iガイドライン」はこちらです。
D&I推進に向けた各社の制度・取り組みをまとめた「制度・取り組み事例集」と、制度導入後の課題と解決策をまとめた「制度運用上のポイント・工夫」で構成されています。
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