改善基準告示違反率が60%超に―運送業界は「知らなかった」では済まされない時代へ

岐阜労働局の発表によると、自動車運転者を使用する事業場のうち、60.4%が「改善基準告示」に違反していたことが明らかになりました。2024年4月の基準改正の影響も大きく、今後は違反率のさらなる上昇も懸念されています。本記事では、背景にある実務的課題と、熊本県内の運送事業者が今取るべき対応について、社会保険労務士の視点から解説します。
改善基準告示違反が6割を突破―改正後の初年度監督結果
岐阜労働局によると、令和6年度・2024年度の監督指導の結果、全体の60.4%にあたる事業場で「改善基準告示」に違反していたとのことです。前年の50.3%から10ポイント以上の増加であり、2024年4月施行の改正が直接の引き金と考えられます。
熊本県内の運送事業者においても、この流れは他人事ではありません。とくに新基準への「理解不足」と「対応の遅れ」が、法令違反を招くリスクとなっています。
違反の主な要因:コスト削減・構造的な問題も
違反の背景には、以下のような要因があるとされています。
- コロナ明けによる物流量の回復
- 価格転嫁に失敗した結果の無理なコスト削減
- 一般道の使用や中継輸送の未整備による拘束時間の長期化
このような「経営構造上の課題」が法令遵守を困難にしている現実もあり、単なる労務管理の問題に留まりません。
割増賃金の未払い―歩合給でも残業代は必要
さらに、労基法上の違反も79.9%と高水準で、なかでも「歩合給だから残業代は不要」と誤解し、28事業場で割増賃金の不払いが発生していました。これは多くの運送事業者に共通するリスクであり、「うちは歩合制だから」という考えは通用しません。
熊本県内運送事業者が今取るべき対応
熊本県の運送業界も、基準違反や割増賃金の誤解によって、知らず知らずのうちに大きなリスクを抱えている可能性があります。
経営者の皆さまにお勧めしたい初動対応は以下のとおりです:
1. 2024年改正の改善基準告示の内容を正しく理解すること
2. 就業規則・運行指示書・賃金規定の再点検
3. 労働時間管理の運用状況の見直し(デジタコ活用含む)
4. 歩合給と残業代の正確な整合性チェック
まとめ
「知らなかった」「みんなやってる」は、もはや通用しない時代です。
労働基準監督署による指導は、今後も強化されていくことが確実です。熊本の地域運送業を守り、継続的な経営を実現するためにも、まずは社内の実態確認から始めてみませんか?
当事務所では、熊本県内の運送事業者さま向けに、改善基準告示対応・労務診断を行っております。お気軽にご相談ください。
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