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人事労務ニュース

厚生労働省「モデル就業規則(令和7年12月版)」更新|“そのまま転記”せずに見直したい5つのポイント

更新情報は「現場で揉めやすい論点」のヒント

厚生労働省が公開する「モデル就業規則」が、令和7年12月版として更新されています。

主な改訂は、
①立候補のための休暇(第32条)の規定例追加、
②犯罪被害者等の被害回復のための休暇等(特別休暇)の紹介追加、
③その他法改正の反映等です。

厚生労働省「モデル就業規則について」

ここで大事なのは、モデル就業規則は「写して完成」させるものではない、という点です。厚労省自身も、モデルはあくまで規程例であり、各事業場の実情に合う内容を検討するよう求めています。

5 モデル就業規則の活用に当たって
このモデル就業規則(以下「本規則」といいます。)は、表紙に記載の時点での
関係法令等の規定を踏まえ就業規則の規程例を解説とともに示したものです。
本規則はあくまでモデル例であり、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものと
しなければなりません。・・・

つまり今回の更新は、「このあたり、相談や行き違いが起きやすいですよ」という“注意喚起”として読むのが実務的です。

改訂ポイント①:立候補のための休暇(第32条)—“想定外の相談”に備える

まず押さえたいのは、立候補休暇は、会社が必ず与えなければならない“法定休暇”という整理ではないことです(ただし、何も決めないまま相談が来ると、現場判断が割れやすい領域です)。

中小企業で現実的に整えるなら、条文だけでなく運用ルールをセットで決めるのがおすすめです。

  •  位置づけ:特別休暇(無給)にする/年次有給休暇で処理する/欠勤扱いの整理
  •  期間・上限:選挙期間を目安にする/会社として取得上限日数を設ける
  •  手続:事前申請の期限、引継ぎ、緊急連絡の方法
  •  職場ルールとの整合:勤務時間中の活動、会社設備・社名の扱い、顧客対応への影響など

ポイントは、「従業員の社会的活動」×「事業運営」をどう両立させるかです。会社規模が小さいほど、1人の不在が業務に直撃します。だからこそ、“起きてから考える”より、“起きる前に線引きしておく”方が、結果的に当事者にも職場にも優しくなります。

改訂ポイント②:犯罪被害者等の被害回復のための休暇—「制度を入れる/入れない」より先に決めたいこと

今回の更新では、犯罪被害者等の被害回復のための休暇を含む、特別休暇の紹介が追加されています。

ただ、ここは当事務所の基本スタンスとして、すべての会社が“特別休暇を新設すべき”とは考えていません
理由はシンプルで、特別休暇は良い制度になり得る一方、小規模ほど「要件」「日数」「賃金」「証明」「代理対応」など運用設計の負担が相対的に重いからです。

一方で、制度が何もないと、いざという時に現場が迷い、本人の説明負担も増え、職場の空気が悪くなることもあります。そこでおすすめは、いきなり新設ではなく、まずは次を“会社として決めておく”ことです。

  •  まずは年休・欠勤・休職など既存制度でどう扱うか(優先順位を決める)
  •  相談窓口(誰に言えばよいか)を一本化する
  •  プライバシー配慮(必要最小限の確認にとどめる)を明文化する

特別休暇に関心がある場合は、厚労省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」に規程例や事例がまとまっています。

働き方・休み方改善ポータルサイト(リーフレット・事例集へのリンク有)

導入するにしても、最初は「小さく作って、運用を見て育てる」が安全です。

この機会に一緒に点検したい:就業規則の“基本”でつまずくポイント

更新点だけを直しても、就業規則全体の整合が取れていないと、結局は運用で詰まります。特に中小企業で見落としが多いのは次のあたりです。

  •  事業場単位で作成・届出になっているか(店舗・支店がある場合)
  •  常時10人以上の事業場で、作成・変更の届出ができているか
  •  意見書(過半数代表者等)の取り方が適正か
  •  周知(配布・掲示・電子閲覧など)ができているか
  •  雇用契約書/労働条件通知書と、就業規則が矛盾していないか

就業規則は「作った」だけでは足りず、周知されて初めて実効性が出ると整理されています。

モデル就業規則の“おすすめの使い方”:最短で失敗しない進め方

モデル就業規則は、使い方を間違えなければとても便利です。おすすめは次の順番です。

1. 現行就業規則の版(最終改定日)を確認
2. モデル(令和7年12月版)の更新点を“答え合わせ”に使う
3. 自社に必要な範囲だけ、条文+運用(申請手続・書式・引継ぎ)をセットで設計
4. 意見聴取・意見書の添付・届出(該当事業場)
5. 施行日を定めて周知(いつでも閲覧できる状態に)

そして最後にひとこと。
「モデルを自力で調整する」段階がいちばん事故が起きやすいです。文言は整って見えても、会社の実態(勤務形態・賃金体系・役職構成・店舗運営)と噛み合わないと、運用で破綻します。迷ったら“スポット相談”でも十分価値があります。

まとめ:就業規則は「現場の判断を軽くする」ための道具

今回の更新は、休暇を中心に「揉めやすい論点」へ目配せがされた内容でした。
就業規則は、従業員を縛るためというより、現場の判断を軽くし、対応のブレを減らすための道具です。小規模ほど1件の対応が職場全体に波及するからこそ、“先回りの整備”が効きます。

当事務所(社会保険労務士 荻生労務研究所)では、熊本県内の中小企業様向けに、

・ 現行就業規則の簡易診断(運用リスクの見える化)
・ 休暇・休職・欠勤の整理(無理なく回る設計)
・ 改定手続~周知・運用までの伴走
を、実務目線で支援しています。必要があればお気軽にご相談ください。

参考(本文中で紹介した公的資料)

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