「就寝中も労働時間?」重度訪問介護業への指導強化から考える、労働時間管理の本質

「夜勤中、利用者が寝ていたら“休憩”扱いでよいのか?」この問いが、重度訪問介護業界で再び注目されています。千葉労働基準監督署が、同業種における長時間労働の是正に向けて手待ち時間の扱いなどを指導しているというニュースは、熊本県内の介護・福祉事業者にも無関係ではありません。今回はこのニュースをもとに、労働時間の定義、手待ち時間の考え方、そして中小企業が今とるべき対策について解説します。
ニュースの要点と背景
千葉労基署は、重度訪問介護業において、長時間労働の常態化を懸念し、指導を強化しています。特に問題視されているのが、利用者が就寝中の「手待ち時間」の取り扱いです。
重度訪問介護では、サービス提供の時間制限がほとんどないため、深夜を含む長時間の勤務が発生しやすい実態があります。この中で、介護職員が就寝中の見守りを行っている時間を「休憩」として処理するケースがあり、これが労働基準法上の「労働時間」に該当する可能性が高いとされています。
「手待ち時間」は労働時間か?
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下にある時間を指します。つまり、「完全に自由に使えない時間」は労働時間と判断されます。
たとえば、職員が夜間見守り中で、急変や介助の要請に即対応しなければならない状態であれば、たとえ動いていなくてもそれは「労働時間」です。過去の裁判例や厚労省の通達も、この点を明確にしています。
熊本県内事業者への示唆
介護・福祉業界だけでなく、宿直・当直、コールセンター、警備業などでも「手待ち時間」の判断は重要です。特に、24時間対応を要する業種では、安易な「休憩」処理が是正勧告や未払残業のリスクを生みます。
熊本県内でも、労働時間管理の徹底が今後より問われることになるでしょう。重要なのは、
- 労働時間と休憩時間の区分基準の明文化
- 就業規則や労使協定での明確な取り扱い
- 実態に即したシフト・記録の整備
これらを怠ると、個別労働紛争や監督指導のリスクが高まります。
社労士の視点:労働時間管理は「仕組み」の設計から
本件は単なるコンプライアンス問題ではなく、持続可能な労務管理体制をどう設計するかの問いでもあります。
例えば、「夜勤時は2人体制にする」「就寝帯におけるオンコール対応範囲を限定する」といった業務設計と、対応可能な労務管理の制度設計はセットで進める必要があります。コストと人員の兼ね合いの中で、法令順守と現場運営のバランスをとる視点が重要です。
まとめ
介護・福祉分野に限らず、「何を労働時間とするか」はあらゆる中小企業にとってのリスク管理の柱です。千葉労基署の今回の動きは、私たちに「曖昧な運用を見直す時期が来ている」ことを教えてくれます。
熊本県内でも、これを機にぜひ、自社の就業実態と労務管理の整合性を見直してみてください。必要な制度整備や指導については、当事務所でもご相談を承っております。
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