熊本市のスタートアップビザ制度運用開始―支援現場で求められる社労士の役割とは?

熊本市でスタートアップビザ制度が開始されました。
外国人起業家支援において、労務対応は見落とされがちです。
熊本市内の社労士として、支援の現場で求められる役割をまとめました。支援機関・行政の皆さまの実務課題解決の、参考になれば幸いです。
熊本市でスタートアップビザ制度がスタート
熊本市が、外国人の起業準備を支援する「スタートアップビザ」制度の運用を始めました。
外国人起業家にとって、日本での第一歩を踏み出しやすくなる制度ですが、支援する側にとっては新たな実務対応が求められる場面も出てきそうです。
起業準備段階で日本に滞在可能に
2025年4月、熊本市は経済産業省の認定を受け、スタートアップビザ制度の対象自治体となりました。
起業を目指す外国人が、市に計画書を提出し、出入国在留管理局から認定を受ければ「特定活動」の在留資格が得られ、起業準備の期間中も日本に滞在することが可能になります。
「経営・管理ビザ」との違い
従来の「経営・管理」ビザのような資本金要件や事務所確保のハードルが、最初の段階では不要になるという画期的な制度です。
しかし、外国人起業家が実際に事業を始めるとなると、「労務」の問題が避けて通れません。
支援機関・行政担当者に求められる新しい視点
起業支援だけではカバーしきれない“労務の壁”
たとえば、スタッフを雇用するタイミングになったとき、
・社会保険の加入
・雇用保険の手続き
・勤怠管理、給与計算体制の構築
・労働時間や休日などのワークルール整備(就業規則)
といった実務が一気に必要になります。
「起業家自身も支援者側も、そこまで意識が回っていなかった」という場面は、決して珍しくありません。
支援の現場にいる行政や支援機関の皆さまにとっても、制度対応とはまた違う労務の知識が求められるケースが今後増えてくると予想されます。
社労士として提供できるサポート内容
社会保険・雇用保険・給与体制づくり
私は熊本市中心部にある「びぷれすイノベーションスタジオ」に入居する社会保険労務士として、スタートアップやベンチャー企業の労務支援を中心に活動しています。
社会保険・雇用保険の手続き、クラウドシステムを活用した従業員管理、給与計算の効率化など、創業初期の「最初の一人目の雇用」から対応可能です。
クラウドを活用した効率的な労務管理
限られた人員と時間で起業を進めるスタートアップにとって、クラウド活用は必須です。
給与計算や勤怠管理も、スムーズな体制構築を支援しています。
他士業との連携による相談ハブ機能
行政書士や税理士など、他士業との連携体制も整えており、どこに相談したらいいか分からない時も「まず私に投げていただければ」必要な専門家や対応策をご提案できます。
支援ネットワークとの接続実績
熊本市・ジェトロとの接点
先日(4月18日)、熊本市とジェトロ主催のスタートアップビザ説明会にも参加し、関係者の皆さまと交流させていただきました。
支援現場のリアルな課題や、制度運用にあたっての細かな不安も共有できたのではないかと思っています。
びぷれすイノベーションスタジオを拠点に
熊本市のスタートアップビザ相談拠点「XOSS POINT(クロスポイント)」と連携した場所に拠点を構えており、支援の現場との距離が非常に近い点も、私の強みの一つです。
よくある疑問Q&A:支援現場で出やすい労務の不安
Q1:スタートアップビザを取得した外国人は、すぐに社員を雇えますか?
はい、雇用は可能です。ただし、在留資格「特定活動」は起業準備を目的としており、雇用の際は労働基準法や社会保険関連各法の適用が必要です。
支援機関は、外国人起業家が制度に加え、労働関連法にも適切に対応できるよう支援することが求められます。
Q2:就業規則はどのタイミングで必要?
常時10人以上の従業員がいる場合は法定義務ですが、実際には創業初期でも「トラブル回避」「働き方の透明化」の観点から早めの整備が望ましいです。
特に外国人起業家には日本の労働慣習が伝わりにくいため、簡易版から導入する支援が効果的です。
Q3:支援機関として、どこまで労務に関与すべきか不安です…
その不安、よくわかります。実務的な手続きやルール整備については、社労士にバトンタッチしていただくことで、制度支援と実務支援の役割分担が明確になります。
無理に全て抱え込まず「連携」を前提とした支援体制が大切です。
事例紹介:起業準備段階での実務支援の実際
たとえば、熊本市内でアプリ開発会社の設立を目指している外国人起業家の方。
開業準備の中で、最初のアルバイトスタッフの雇用を検討していましたが、雇用保険の手続きや労働時間の管理について不安を感じておられました。
この段階で社労士が関わることで、必要な手続きをスムーズに進めるとともに、支援機関や行政担当者の「制度外の実務サポート」という負担を軽減することができました。
まとめ:地域の連携で、外国人起業家支援を強化する
スタートアップビザ制度は、地域にとっても大きな可能性を秘めた取り組みです。
その一方で、実務面では「誰が、どこまで、どう支援するか」が見えづらくなる場面も出てきます。
そんなときに、地域の専門家として、行政・支援機関の皆さまのお力になれれば幸いです。
制度の隙間や現場の困りごとに寄り添いながら、外国人起業家の支援体制を一緒に築いていけたらと考えています。
関連情報
起業準備の「ビザ」制度 熊本市が運用開始(熊本日日新聞 2025年4月18日 19:07配信)
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