“休めない職場”の構造をどう見直すか ─労務相談で見えた複雑な背景と対応方針

絡まった相談を、どう解きほぐすか ─医療機関からの相談で考えたこと
社会保険労務士として労務相談に対応していると、単純な問題だけでなく、いくつもの課題が絡み合ったようなケースに出会うことがあります。今回の相談も、まさにそうしたものでした。
ある医療機関から、「有給休暇の取得が進まず、5日間の取得義務が守れない」という相談がありました。表面的には年休の未取得という問題ですが、話を聞いていくうちに、さらに深い背景が見えてきました。
人手不足、家庭の育児や介護の事情、夜勤や時間外勤務ができない職員の存在など、複数の要因が重なり、シフトが組みにくく、結果的に「休みたくても休めない」状況が生まれていたのです。
見えてきたのは、複数の課題の絡まり
こうなると、単なる年休の問題では終わりません。育児・介護休業などの制度支援、人手不足解消のための求人対策、さらに柔軟な働き方を可能にするための人事制度の見直しなど、多岐にわたる対応が求められます。
ただ、現実的には、すべてを一度に解決することはできません。時間も予算も限られています。そこで私は、優先度を見極めながら対応方針を組み立てるようにしています。
優先順位をつけて、段階的に進める
このようなケースでは、まず「緊急度」と「重要度」の視点で課題を仕分けます。法令上の対応が必要なものは最優先で取り組み、その後に制度の改善や長期的な対策を検討していきます。
今回も、まずは年休取得義務の対応と人員確保の打ち手について、短期的にできることから整理しました。その上で、中長期的には人事制度の見直しや柔軟な勤務体制の整備といった、全体最適に向けた提案を段階的に進めています。
相互理解と提案の積み重ねが鍵になる
こうした案件では、社労士がすべての答えを一方的に出すことはできません。経営側と現場、それぞれの事情を丁寧に汲み取りながら、最適な落とし所を探っていく必要があります。
その場で即答できないことも多く、相談後に一度持ち帰って「提案書」という形で改めて提示することもあります。関係者と一緒に「どこから着手するか」を確認し、少しずつ前に進めていく。正解がないからこそ、相手との対話と相互理解を大切にしながら、丁寧に糸を解いていくようにしています。
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