解雇予告除外認定申請:審査で見られるポイントと“やってはいけない”NG例

「重大な不正が発覚したので、すぐに懲戒解雇したい」
この場面で必ず問題になるのが、解雇予告(少なくとも30日前)または解雇予告手当(少なくとも平均賃金の30日分)です。
一定の場合、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けることで、解雇予告(または手当)が不要となります。ただしこれは“会社の判断だけで完結する制度”ではなく、監督署が事情を確認し、個別事情で審査・判断します。だからこそ実務では「制度は知っているのに、動かすほど難しい」手続になりがちです。
熊本の中小企業では、製造業・建設業・医療介護・サービス業など、少人数で現場が回っている会社が多く、人事担当が専任ではないことも珍しくありません。そうした環境では、対応を誤ると「現場が止まる」「人が辞める」「噂が広がる」といった二次被害が起きやすいのが現実です。
※本記事は一般的な情報提供です。個別事案は、事実関係・社内手続・就業規則・運用状況等で結論が変わります。
1. どんな会社が困るか(社内トラブル化・手当負担・手続遅延)
除外認定が絡む場面は、だいたい次の3つが同時発生します。
- 社内トラブル化:本人が反発し、現場が動揺。聞き取りや記録が後手になりやすい
- 手当負担の問題:認定が認められない可能性を踏まえると、原則どおりの負担リスクが残る
- 手続遅延:監督署が事情確認を行うため、準備不足だと追加確認・追加提出が増えやすい
熊本は地域性として「横のつながり」が強い分、社内だけでなく取引先や採用面にも影響しやすいことがあります。だからこそ、結論はシンプルです。
早く終わらせたいほど、拙速に動かない。これが最短ルートになります。
2. 監督署目線の“確認ポイント”
監督署が確認していくポイントは、大きく3つです。
(1)その行為が“重大・悪質”と言えるか
単なるミスや軽微な違反ではなく、解雇予告の保護を与える必要が乏しいと言える事情があるかが核です。
(2)会社の説明が“事実として筋が通っているか”
「いつ・どこで・何が起きたか」が曖昧、途中で説明が変わる、関係者の話が食い違う——
こうなると、確認が長引き、社内の疲弊も増えます。
(3)職責・影響・これまでの勤務状況とのバランス
同じ行為でも、管理職か、金銭や機密を扱う立場か、影響がどの範囲に及ぶか、これまでの勤務状況はどうかで見え方が変わります。
ここが“感情”ではなく、“説明可能”になっているかが重要です。
3. ここで躓く:典型的なNG例(揉めやすくなる行動)
除外認定の可否以前に、手続の進行・紛争化・社内の空気に直結するNG例です。
NG例1:理由が抽象的(結局、何をしたのかが分からない)
「会社に損害を与えた」「信用を失墜させた」「勤務態度が悪い」だけで押し切ると、事実確認が進まず、結果的に長引きやすくなります。
NG例2:時系列が崩れている/説明が途中で変わる
口頭説明と社内記録で日付・経緯がズレると、“何が事実か”から確認がやり直しになりやすいです。
NG例3:社内の手続が雑(弁明機会・決裁・記録が残っていない)
熊本の中小企業で特に多いのが「忙しくて記録がない」「現場判断で進めた」ケースです。
後から整えるほど不自然になりがちなので、最初の設計が肝になります。
NG例4:「除外認定が取れれば勝ち」と誤解する
除外認定は“解雇予告(手当)”の論点です。解雇の有効性の争点が別に残ることはあり得ます。
「論点を増やさない」ことが、揉めずに終わらせる鍵です。
NG例5:本人対応が感情的・対立的になり、火種が増える
言い方、連絡手段、貸与物や私物、精算、最終出勤日の扱いなど、周辺対応で揉めると、争点が増えて解決コストが跳ね上がります。
4. “揉めない終わらせ方”の考え方
当事務所が大切にしているのは、次の3つです。
- 事実と評価を分ける:事実(いつ何が起きたか)と評価(会社としてどう扱うか)を混ぜない
- 説明できる状態をつくる:第三者に説明できる整合性があるほど、余計な対立を減らせる
- 相手の尊厳を守る:強い対応ほど“最後の接し方”が、その後の紛争化を左右します
熊本は採用難の業種も多く、「一件のトラブル」が職場の信頼や定着に影響することがあります。
だからこそ、結論はこうです。
強い対応ほど、冷静に・丁寧に・記録を整えて。これが、結果として会社を守ります。
5. 初回相談で確認する情報
初回の論点整理では、次のような情報を確認します。
(具体的な様式や文例は、個別事情により最適解が変わるため、面談で整合性を取りながら整理します)
- 事実経過(いつ何が起きたか/誰が把握しているか/証拠の所在)
- 就業規則・懲戒関連の規程(定めと運用の一致)
- 本人の職務・職責と影響範囲(管理・金銭・機密など)
- これまでの勤務状況(評価・注意履歴・欠勤等)
- 社内で行った対応の記録(聞き取り、通知、決裁、メモ等)
- 現在の緊急度(いつまでに何を決める必要があるか)
6. まずは“論点整理”→必要なら“整合性レビュー”
除外認定は「制度の知識」よりも、事実・規程・記録の整合性が結果とスピードを左右します。
当事務所では次の2メニューで支援しています。
✅ 初回45分:論点整理(オンライン可)
- 事案を「除外認定の検討余地」「原則対応が安全」「他論点が大きい」等に仕分け
- 争点(揉めやすい点)を整理し、社内判断の軸を作る
- 次に“何を決めるべきか”を明確化(現場を止めません)
✅ 書類の整合性レビュー(提出前チェック)
- 事実経過・社内記録・規程の整合性に矛盾がないか確認
- 追加確認が入りやすいポイントを洗い出し、対応方針を整理
- 「やり直し」や「争点の増加」を避けるための安全設計
ご相談は早いほど、選択肢が残ります。
「この状況で、どこまでが現実的か」を一緒に整理しましょう。
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