教員給与 改正法が成立―中小企業にとって「働き方改革」の示唆とは?

2026年から公立学校の教員給与が段階的に引き上げられます。同時に、教員の働き方改革も法的に後押しされる形に。教育現場の動きは、一見無関係に見える中小企業の経営にも多くのヒントをもたらします。今回の改正内容を解説しつつ、企業側の「人材定着」「生産性向上」にどう応用できるかを考察します。
教員給与の上乗せが10%に:給特法改正のポイント
2025年6月11日、いわゆる「給特法」の改正法が成立しました。
これまで教員には残業代の代わりとして「月給の4%」が一律支給されていましたが、これが2026年から毎年1%ずつ引き上げられ、6年後には10%となる予定です。
また、教育委員会には教員の業務量管理計画の策定と公表が義務づけられ、新職位「主務教諭」の設置によって若手教員のサポート体制も整備されます。
目標としては「時間外勤務を月平均30時間程度に削減」を掲げ、教育現場の働き方改革が本格化します。
なぜ「時間管理」と「処遇改善」が一体なのか
今回の改正は「処遇改善」と「業務改革」の両輪で進める構成です。
これは一般企業でも通用する考え方です。人材の流出を防ぐためには、給与などの「目に見える改善」だけでなく、働く環境や役割の明確化といった「目に見えにくい要素」の見直しも欠かせません。
中小企業が学ぶべき3つのポイント
1. 定量的な時間管理の導入
教育委員会に義務化された「業務量の計画と公表」は、企業の業務効率化にも応用可能です。特に、従業員の属人化や長時間労働が常態化している企業にとっては、タスクの見える化が急務です。
2. 役割分担と新職位の創設
若手の育成を重視する点では、「主務教諭」のような中間層ポジションの導入は、企業にも示唆的です。プレイヤーとマネージャーの間に位置する職責を明確化することで、人材の定着率や成長スピードの向上が期待できます。
3. 段階的な処遇見直し
一度に大幅な賃上げが難しい企業でも、段階的な報酬見直しは有効です。評価制度と連動させることで、モチベーション管理にも繋がります。
教育現場の改革から学ぶ「人が辞めない組織」のつくり方
文科省は「教育活動に専念できる環境づくり」を掲げていますが、これは企業にも共通する理想です。
誰かに仕事が偏らず、役割が明確で、時間を意識した働き方が実現されること―それが離職防止と採用力向上の両立につながります。
最後に
労働環境改善は、教育現場だけの課題ではありません。むしろ、採用難が続く中小企業こそ、「働き方改革」の本質に立ち返る必要があります。
今回の改正法をきっかけに、自社の業務設計や処遇体系を見直す一歩としてみてはいかがでしょうか。
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