過労死認定最多から見える、熊本の中小企業が直面する「働き方」の岐路

厚労省が発表した2024年度の労災認定件数が過去最多に。背景には根強く残る長時間労働、そして今なお対立する「労働時間を減らして賃金を上げる」か「もっと働ける制度に緩和する」かという議論があります。熊本県内の中小企業経営者が直面する現実と、これからの選択肢を社会保険労務士の視点から考察します。
過労による労災が過去最多──なぜ減らない長時間労働?
2024年度、過労やストレスによる労災認定件数が1304件と過去最多となりました。法定の残業時間上限(月45時間・年360時間)は2019年に導入されたものの、現場では「業務の繁忙期に対応できない」「人手不足で守れない」という声が根強くあります。
経済界は「もっと働ける制度」を期待?
経団連は、裁量労働制の拡大や成果主義の徹底など、労働時間規制を緩める方向を提言。しかしこれは、長時間労働の温床となるリスクも孕んでいます。労働時間の管理が甘くなれば、結局は現場の疲弊を招くだけです。
若者の意識は「残業しない働き方」へと転換
若年層の8割以上が「私生活との両立」を重視して企業を選び、9割が「定時退社や両立に働きがいを感じる」と回答。これは地方でも例外ではなく、熊本でも「残業前提」の職場は人材採用が困難になる可能性があります。
「残業を前提としない経営」への転換が鍵
働き方改革の先進事例では、デジタル化や業務棚卸しを通じて残業を減らし、浮いた人件費を賃金のベースアップに転化。結果として採用力が向上し、離職率も低下。出生率にも好影響を与えている企業もあるとのこと。
熊本の中小企業が取るべき選択とは?
経営者にとって、残業代の割増率引き上げ(50%案)や勤務間インターバル制度の義務化は一見するとコスト増に映ります。しかし、これらを「コスト」ではなく「投資」ととらえる視点が重要です。短時間でも成果を出せる人材を評価し、長く働ける環境を整備することが、人口減少時代の生存戦略となるでしょう。
まとめ
熊本の中小企業にとって、これからの働き方の見直しは「避けられない選択」です。従来の延長線上での「長く働ける制度」ではなく、「短時間でも高成果」の働き方へ。今こそ、労働時間の構造改革に本気で取り組む時です。
関連記事
-
地方の中小企業にもテレワークが必要な理由 テレワークと男性育休取得促進セミナーの相談員社労士が解説 地方の中小企業にもテレワークが必要な理由 テレワークと男性育休取得促進セミナーの相談員社労士が解説 -
重大事故を未然に防ぐために|宮城県トラック事故報告から学ぶ、労務管理の盲点 重大事故を未然に防ぐために|宮城県トラック事故報告から学ぶ、労務管理の盲点 -
人事担当者向け|熊本県での「治療と仕事の両立支援」の具体策とは? 人事担当者向け|熊本県での「治療と仕事の両立支援」の具体策とは? -
なぜ「女性への支援制度」は利用されないのか? 社労士が提案する解決策 なぜ「女性への支援制度」は利用されないのか? 社労士が提案する解決策 -
No Image 熊本市の飲食店で労働時間の管理ミスが割増賃金未払いにつながったケース -
熊本県のスタートアップ起業家が押さえておきたい、労務管理の基本と専門家のサポート 熊本県のスタートアップ起業家が押さえておきたい、労務管理の基本と専門家のサポート
