「女性の健康課題」厚生労働省指針にどう向き合う? 中小企業に求められる3つの視点

厚生労働省が企業向けに「女性の健康課題に配慮した職場づくり」指針を公表しました。
生理、PMS、更年期など、女性の健康に関する課題は業務パフォーマンスにも影響を与える一方で、制度があっても「使いづらい」「相談しづらい」職場の風土が壁となっています。
本記事では、中小企業に求められる現実的な対応策を、社会保険労務士の視点で解説します。
「制度はあるのに使えない」現実をどう見るか
厚労省の新指針では、「生理休暇を取得しやすい職場づくり」「相談しやすい体制づくり」の必要性が示されました。
背景には、女性社員の8割以上がPMSや更年期などの健康課題で仕事に支障が出ているという実態があります。
しかし現場では、「前例がない」「上司の理解がない」「周囲に迷惑をかける気がする」などの理由で、制度を使えずに悩む女性社員が少なくありません。
これは制度設計だけでなく、職場の心理的安全性の問題でもあります。
企業に求められる3つの視点
中小企業にとっても、女性の健康課題への対応は「人材の定着と活躍」「職場の生産性」「経営リスクの低減」といった視点から無視できないテーマです。
以下の3点が特に重要です。
①制度設計だけでなく「運用のしやすさ」に配慮する
– 例:理由を言わなくても取れる「月次有給制度」の導入
– 有休や生理休暇を、取得しやすくするルールと風土づくりが不可欠
②管理職への教育・意識改革
– 生理痛の疑似体験研修を導入した企業もあり、共感を育てる仕組みが重要
– 「我慢が当然」「みんな頑張ってる」は無意識のハラスメントになりうる
③男女問わず使える制度にして“特別扱い”を回避
– 健康課題への対応を「女性だけのもの」にしない制度設計がポイント
– 例:誰でも取得できるリフレッシュ休暇など
熊本の中小企業にとっての課題とチャンス
熊本県内でも、人材確保と定着が経営の大きな課題になっています。
少子高齢化が進む中、女性人材の活躍は企業成長に欠かせない要素です。
逆に言えば、健康課題への配慮がある企業は「選ばれる職場」となり、結果的に競争力のある企業経営につながります。
まとめ:制度は「使われてこそ意味がある」
制度を整えることはスタート地点にすぎません。
大切なのは、社員が「安心して使える」「相談できる」と感じられる風土をつくることです。
社会保険労務士として、制度設計から社内研修・運用支援まで、実効性のある職場環境づくりを支援いたします。
健康課題に配慮した職場づくりに関するご相談は、お気軽に荻生労務研究所までご連絡ください。
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