【技能実習制度】監督指導が過去最多に―中小企業に求められる対応とは?

関東甲信越地方の労働局が実施した「技能実習生の受入れ事業場」に対する監督件数が、過去10年で最多の2,224件に達しました。違反率は7割を超え、通報件数も急増しています。この状況は熊本を含む全国の中小企業にも直結する課題です。本記事では、中小企業経営者が押さえておくべきポイントを解説します。
監督件数の増加と違反の実態
令和5年における監督件数は前年比2割増の2,224件。平成26年の717件と比べると、わずか10年で3倍に膨らみました。
注目すべきは違反率で、74.8%に上ります。違反内容の内訳は以下の通りです。
- 安全関係違反:33.4%
- 労働時間:22.0%
- 割増賃金:21.8%
つまり、技能実習生に限らず「労働時間管理」「安全衛生」「賃金計算」という基本分野で違反が多発している現状です。
熊本県内企業にとっての意味
熊本でも製造業や農業分野を中心に技能実習生の受入れが進んでいます。今回のニュースは「遠い関東の話」ではありません。監督指導や通報の増加は全国的な流れであり、熊本の中小企業も例外ではないのです。
特に以下の点で注意が必要です:
1. 36協定の適正運用
法定時間外を超える長時間労働は、通報の主要な対象になっています。
2. 安全衛生の徹底
教育不足や安全管理の不備は労災リスクを高めます。
3. 寄宿舎の届出・環境整備
生活環境に関する違反も摘発事例として増えています。
経営者が今すぐできること
- 就業規則や36協定の実態点検
- 労働時間の把握と是正措置(PCログや勤怠システムの活用)
- 実習生を含めた全従業員への労務教育
- 外部専門家(社労士等)による労務監査の実施
技能実習生の労務管理は「人手不足解消」の手段であると同時に、「労務リスクの温床」ともなり得ます。監督指導が強化される今こそ、自社の労働環境を見直す好機です。
まとめ
技能実習制度に関する監督件数の増加は、外国人労働者の保護だけでなく、日本人社員を含めた「働きやすい職場づくり」を企業に求めているサインです。
熊本の中小企業にとっても、今後は「法令遵守」だけでなく「働き続けてもらえる環境づくり」が競争力のカギとなります。
当事務所では、技能実習生を含めた労務管理体制の整備・点検をサポートしています。ご不安のある経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。
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