熊本の中小企業経営者へ—「静かな退職」と副業を“味方”にする発想転換

「最近の若い社員は昇進を望まない」「本業への熱意が薄い」——熊本の経営者の方から、そんな声を耳にすることがあります。確かに、全国調査でも若手社員を中心に「静かな退職」というスタイルが広がっており、必要最低限の業務をこなしつつ副業や私生活を重視する人が増えています。
一方で、その背景を丁寧に見ていくと、必ずしも企業にとってマイナスばかりではありません。本記事では、「静かな退職」と副業の現状を整理し、熊本の中小企業がこれを経営資源として活かす視点をお伝えします。
若手層で広がる「静かな退職」
調査によると、「静かな退職」に共感する人は全体の72.7%、特に入社3~5年未満の若手層では89.5%が共感しています。
この背景には、
- ワークライフバランス重視(45.3%)
- 昇進や管理職への関心低下(33.6%)
があります。
熊本の中小企業にとって、これは「意欲低下」ではなく「価値観の多様化」と捉えることが重要です。従来のキャリアモデルに縛られない若手は、本業+副業でスキルを磨き、結果的に企業へ還元する可能性があります。
副業はリスクではなく「外部研修」
「静かな退職」を実践している人の64.3%が、副業や社外活動に時間を活用しています。
熊本では、
- 地域特産品のネット販売
- 観光業のSNS運用支援
- 農業関連のマーケティング
など、地域性を生かした副業が増えています。
副業は、適切なルールさえあれば“外部での実地研修”のようなものです。外で培ったスキルや人脈は、本業の新規事業や販路拡大にも直結します。
経営者が取るべき現実的な対応
「本業専念」を求める経営姿勢は理解できます。しかし現実として、副業や「静かな退職」を選ぶ人をゼロにすることは困難です。むしろ、以下のように“味方化”する方が組織の安定につながります。
1. 副業ガイドラインの整備
利益相反や情報漏洩防止のルールを明確化。これにより経営者の不安を軽減。
2. 成果還元の仕組み
副業で得た知見を社内共有する場を設定し、組織全体の成長につなげる。
3. 柔軟なキャリアパス
昇進だけでなく、専門職やプロジェクト型ポジションなど多様な成長ルートを用意。
熊本の経営者へのメッセージ
「静かな退職」や副業は、経営者にとって管理の難しさや本業への集中度低下という懸念を伴います。それは決して見過ごせない感情です。
しかし一歩引いて見れば、これは“時代の流れ”であり、社員の自律性や社外経験を取り込むチャンスでもあります。
熊本は大都市と違い、人材の採用・流動が限られます。その分、社内にいる人材をどう成長させ、どう地域や市場とつなげるかが生き残りのカギです。「静かな退職」を「静かな成長」に変える視点こそ、これからの経営者に求められる資質ではないでしょうか。
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