助成金申請は「労務監査」から始めましょう – 荻生労務研究所の対応方針

こんにちは。熊本市の社会保険労務士、荻生清高です。
最近、「助成金だけスポットでお願いできませんか?」というご相談をいただくことが増えています。
しかし、助成金申請には大切な前提条件があります。ここを整えないまま申請を行うと、せっかく受給できたお金を返還しなければならないケースや、企業の信用に関わるトラブルになる可能性があるのです。
助成金申請には「法令遵守」が必須
助成金は国や自治体が企業を支援するための制度ですが、
受給のためには、労働法令や社会保険法令の遵守が絶対条件です。
例えば、
- 就業規則、労働条件通知書(雇用契約書)の未整備
- 社会保険、雇用保険の未加入
- 労働時間管理体制の不備
- 残業代の未払い
こういった状況があると、申請ができないばかりか、支給決定後でも返還を求められるリスクがあります。
当事務所の対応方針
そのため、当事務所では助成金申請をご依頼いただく前に、簡易労務監査を実施しています。
監査では、
- 法令遵守状況の確認
- 就業規則や賃金規程のチェック
- 勤怠・労働時間の管理状況の確認
- 社会保険、雇用保険加入状況のチェック
などを行い、必要に応じて改善提案をいたします。
監査は別途お見積もりとなりますが、これを経て基準を満たした場合のみ、助成金申請の支援を行います。
県外企業への対応について
熊本県外(特に福岡など)の企業様で、訪問対応が必要になる場合は、日当や交通費をご負担いただく場合があります。
リモート対応も可能ですので、まずはご相談ください。
なぜここまで慎重なのか
助成金は「もらえるかどうか」だけでなく、「もらった後に問題が起きないか」が非常に重要です。
経営者の方にとっても、従業員の方にとっても、安心して活用できる制度でなければなりません。
さらに、助成金の本来の趣旨は、対象となる取り組み――例えば雇用の拡大や質の向上(時間外労働の削減、生産性向上、非正規雇用者のキャリアアップ制度など)――を企業が主体的に進めることを支援することにあります。
つまり、「助成金があるから取り組む」というのは順番が逆だと当事務所は考えています。
まず企業が、経営者が本気で雇用や労働環境の改善に取り組む姿勢と覚悟を持つことが先であり、助成金はその努力を後押しするための制度です。
当事務所では、助成金申請を「お金を取るための支援」にとどめず、働き方改革や生産性向上を実現するためのパートナーとして支援することを基本方針としています。
まとめ
助成金は魅力的な制度ですが、申請はスタート地点ではなくゴールの一部です。
まずは自社の労務管理を整え、法令遵守の土台を固めてから取り組むことが、安心して受給するための近道です。
「うちは大丈夫かな?」と思われたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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